一般社団法人 『データで考える力』イニシアティブ

第0回:「データで考える」ということをコラムで考える

本コラムの目的

 一般社団法人「データで考える力」イニシアティブでは、とりわけ主に質的な研究で使われる意味解釈的な研究法をビジネスなどの実践の場で使ってみることによって、研究者のみならず、ビジネスの様々なシーンにおいて、ビジネスがうまくいくことをアウトカム(達成成果)に掲げたときに、大いなる達成感を感じて、喜んでもらうために書いた文章である。

 昨今のAIブームやこれまでのビッグデータなどを活用したデータサイエンスがもてはやされる潮流の中で、分類を軸としたタグ付けサービスを開始するなど、ビジネスに携わりながら、データを中心とした研究法に着目し、社会でそれを実践する場を探索してきた。そこで気づいたこととして、研究者が主観的側面をデータ駆動型の理論構築の手段を用いながら定性的な意味解釈を実践されている方法論を研究領域から一度切り離して着目し、人文科学、社会科学、自然科学の各領域で、この意味解釈的な研究法をデータ解釈的研究法としてビジネスの場で適用したら、よりよい提言ができるのではないかと思い、筆をとってみた。

はじめに

 そもそも「データで考える力」イニシアティブの代表をお引き受けする際に、自身で研究し続けてきた研究法のビジネスへの適用理論を実践することをこの社団法人で宣言させてもらっていた。なぜ研究者でもない著者自身が学び取ろうとしていたかは後述するとして、研究法を如何に使いこなすかがこれからの時代の処世術・処方箋になると思っている。

 研究法における解釈的研究の動向は、今日までに人文科学の研究の中で特に多くの研究成果をもたらす為の方法論として進化を遂げてきたと言える。これらは主に心理学、社会学、さらには人類学などを中心に人間の心理的意味解釈を行い、それを社会や世界に拡大した人間の主観的な解釈のシステムを構造的に捉える為に、より質的な分析を展開しながら各研究領域と共に発展してきた経緯がある。

 また、研究法には3つの方法論が大きく存在する。1つは数理演繹法と呼ばれる数学的な理論により、定量的な分析のもととなる数式に基づく変数を使って演繹的に説明変数から結果変数を割り出していく実証主義や定量主義に紐づく所謂サイエンスと呼ばれる領域の方法論である。2つめは統計帰納法と呼ばれる統計手法を用いて、多くの事実や真実の中から統計的妥当性を検定しながら因果法則などの関係性を導き出して行く方法論である。3つめとして本著のタイトルにもある解釈的な研究である意味解釈法と呼ばれる方法論がある。本著では意味解釈の方法論の必要性や学術的な定式化を図りながら、一般的に「科学的な研究法」と思い込まれている上述2つの数理演繹法と統計帰納法との関わりやMixed Method Approach(混合研究法)と呼ばれる新たな研究法の流れの中で、定性的な分析と定量的な分析との「トライアンギュレーション(三角測量)」と呼ばれる手法を広義の意味で拡大解釈して、もともと社会学の領域の中で進化してきたこの方法論を解釈的研究の中で、文字通りトライアングル(三角形)の頂点に置いた研究法として再定義していくものとする。

 まずは、新たな手法による3つの研究法をミックスさせ、具体例を交えながらケーススタディとして自身が研究している経営情報学の研究領域を題材に今後の研究法を使った方法論を小出しにしてコラムとして論じていきたいと思っている。

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