一般社団法人 『データで考える力』イニシアティブ

対談インタビュー
『失敗事例に学ぶ「ビッグデータ」ビジネス戦略活用』

データ分析を仕事に活かしているキーパーソンに「データで考える力」イニシアティブがインタビュー。
今回はビッグデータ・アプリケーションに対する、初めてのオペレーショナルデータベース・テクノロジーを展開するマークロジック社のシニアセールスエンジニアの鈴木貴志さんにデータ分析への取り組みやレポーティングの重要性についてお伺いしました。

鈴木 貴志 氏のプロフィール

  • 大手印刷会社、BI、統計解析ツールベンダ、を経てマークロジック株式会社へ入社
  • マークロジック社ではセールスエンジニアとして活躍中
  • レポーティング、データ分析のスペシャリスト
  • メーカー、小売等へのコンサルティング経験も豊富

データ分析のバックグラウンド

—— お久しぶりです。本日は、お忙しい中お時間いただきまして、ありがとうございました。
ざっくばらんに、データ分析や今後の動きについてお聞かせいただければと思います。

鈴木:わかりました。

私のキャリアがデータ分析の歴史とかなり近いと思いますので、そこからお話します。

大学を卒業後、就職したのが印刷会社でして、そこでクレジットカード会社の 明細表に ダイレクトメール(以下DM)を封入する仕事をしておりました。
もちろん DM の善し悪しでヒット率というのは変わってきますので、データ分析と言う言葉がないような時代から、誰にどの DM を送ったら良いかをずっと研究していました。
15年以上前の話しで、Excel が DOS 上で動いていた時代です。

—— 今でも DM のヒット率という考え方はありますよね。

鈴木:はい、基本は変わらないですね。

紙媒体から電子媒体になりましたが、今でも同じようなことをやっています。最近の風潮として「データ分析が必要だよね」と取り上げられているのですが、「昔からやっているんですけど」というのが正直な感想です。

当時、クレジットカード会社の顧客専用サイトというのは存在していなくて、顧客専用サイトを構築すれば紙媒体の配送コストを抑えられるし、顧客の利便性が上がるしというような提案チームにいました。印刷会社としては矛盾をはらんだ提案でしたが、誰でもインターネットが使える状況ではなかったので紙媒体はなくせませんし、そのような提案をして紙媒体とデジタル媒体が並行運用するような時代でした。
だんだん、インターネットが普及することにより Web に切り替わってくると、今で言うリコメンドが始まりました。クリック率が高いバナーはどれか何ていうのをその頃からずっとやっていました。

—— パーソナライズをその頃からやっていた?

鈴木:はい、もちろんパーソナライズなんて言葉はありませんでしたが、何となくですが「個人に最適なものを」というキーワードで何とかならないかとやっていました。

そう意味で面白い話があるのですが、ある通販のお客様で Excelの列に商材のカテゴリ情報を並べて横に顧客の情報を並べて、購買履歴のある商材のセルに「1」でビットを立ててプロットします。そのプロットした Excel を上手くソートをして、黒く浮かび上がるところがわかりますので、この人にこの商材というのがわかってくるのです。
そうやってリコメンドテーブルを作っていたんですよ、昔は。

デンシティマップが出来るというわけで、実は今でもこうやってリコメンド商材を探している人はいると思いますよ。
A3 の紙を重ねて透かしながら、どこにボリュームゾーンがあって、白いゾーンがあればここにテストマーケティングをする。買ってくれたのか、買ってくれなかったのか、そうやってまたフラグを立てて潰していくということをやっていました。
科学的ではないようで、科学的なことをやっていましたね。(笑)

—— いただきます、そのお話。今本を執筆しているので。
数学的なアプローチではなく、黒いエリアが購買実績で、更に白いエリアがあればここにアプローチするんですよ、といったアプローチの方が読者はついてきてくれるかなと思っていまして。

鈴木:はい、その話を書いて怒る人はいないと思いますよ。

以前、販売していたデータ分析ツールでもお客様に機能を細かく説明してもあまり意味はなくて、それよりも先ほどのような Excel のお話をして、その Excel での作業や見ていたものが楽になるんですよ、といったアプローチの方がお客様に響きましたね。そこに費やしていた時間がコスト削減できるのですよと。

分析とはなんぞやという本質的なお話をしないと始まらないんですよ。分析ってそんなに難しいものじゃないですよって、お伝えすることが大事ですね。
分析とはというのを理解してもらって、こんなに簡単にできるのですよとお伝えするようなアプローチをしていました。

—— TiD のアプローチも全くそのアプローチなのですよ。データ・インサイトという発想は「データのKKD (勘・経験・度胸ではなく洞察力)」であると言っています。
これらを鍛えていけば、アソシエーションルールをわかっていなくても、先ほどの Excel ではないですが、上手く並べ替えて見ましょう、というアプローチが重要だと思っています。

鈴木:そうなんですよ、お客様も実は肌感覚で分析をしている人はたくさんいらっしゃるのですよ。

自分がデータ分析していると気づいていないケースが多くあります。そこに気づいてもらわないと、ツールを買うということ自体、敷居が高くなってしまいます。
実は分析をやっていて、その作業を手伝ってあげるんですよ、というアプローチをしないとツールの良さが伝わらなかったですね。

——「データで考える力」という名称も「統計解析研究会」というアプローチではなく、もともと考える力というのは勘と経験をベースに皆さんが持っていて、それにたいして少し理解を深めていただければ良いのですよ、だと思っています。

鈴木:本当にそうだと思います。

考えるきっかけさえ与えてあげれば、特に日本人は真面目に仕事を続けられるので。
個人としても組織としても自己成長出来る。そのきっかけを与えることがすごく重要です。
その手の面白いネタがいっぱいあります。

DM の送付タイミングをインサイトしてみる

鈴木:例えば、10年ほど前の聞いたお話なので今少しリアリティがないですが、薄型テレビが最大30インチ、1インチ、2万円以上する時がありました。

ちょうどブラウン管のテレビからプラズマや液晶に変わり始めるタイミングです。これに VHSからDVD に変わるタイミングというのは実はシンクロしていまして、小売からすると薄型テレビを買ってもらったお客様には同時にDVD プレーヤーも買ってもらいと考える、また売れそうだと考える。
ただ、同時に買ってもらえなかった場合に DM 出してでも後から買ってもらいたいですよね。そうした場合、いつ DM を出すのが良いかわかりますか?

—— わからないな~、その日じゃないの?

鈴木:はい、気持ち的にはそうですよね。

現場の方に質問してみると1週間、1ヶ月、3ヶ月などいろいろ回答はあるのですが、実はデータから見ると6~9ヶ月後に購買が集中していたそうです。
今の感覚からいうと新しいテレビ買ったら、DVD プレーヤーも一緒に買うでしょ、となりますよね。でも、6~9ヶ月後なんです。
そこでその理由を考えたのですが。この時、30インチのテレビが60万円、DVD プレーヤーは20万円ぐらいしていました。トータル80万円の出費なので、短期的には両方買うとはならないんですよ。それで6~9ヶ月というスパンは、冬夏のボーナス期間ということになります。ボーナスのサイクル、もしくはそれよりちょっと長い9ヶ月が正しいのです。
これはあくまでも仮説ですが…

—— なるほど~。

鈴木:それって、なんてことはなくて、スプレッドシートでテレビを買った人が何ヶ月後に DVD プレーヤーを買ったのかをカウントするだけなんですよ。

もちろん、テレビを買った翌週に DM を出しても売れるかも知れませんが、当時の DM は紙媒体だったので、コストパフォーマンスを考えると DM を打つタイミングは考えた方が良いのではないのでしょうか、ということです。
それも高度な分析はしていなくて、単純に期間集計しただけなんですよ。

—— 当時としては貴重なデータだったと。

鈴木:そうですね、当時は例えば1年分の販売データを集計することですら大変でしたからね。

失敗事例に学ぶ「ビッグデータ」ビジネス活用「マーケティングの効果測定」

鈴木:あと、ちょっと話題は変わりますが、マーケティングの効果測定をちゃんと取りましょうねというお話があります。

—— それはよく聞くお話ですね。

鈴木:はい、(誤解を恐れずに) マーケターの中には自分が打ったキャンペーンの結果を知りたくない人が多くいました。

これは本当にあった話なんです。
ECサイトの販売分析をやったことがあって、その時は併売分析をやってみたんですね。その分析で、普段はあまり見られない併売パターンがあって、DVカメラとMP3プレーヤーが一緒に買われているんですよ。

DV カメラならケーブル、メディア、三脚などの付属品的なものが一緒に売れるのはわかるのですが、なぜか MP3プレーヤーが一緒に購入されているんです。
普通に考えると同時に買う必要がないんですね。考えられるケースとすれば、DVカメラを買ってポイントが付きました、そのポイントでMP3プレーヤーをポイントで買いました。
しかし、この会社の場合、獲得したポイントで同時に買うということはできないのでそれは理由ではなさそうでした。しかし、不思議なことに同時に購入しているんです。
こんなデータを見つけてしまいました。さて、なぜでしょうか。肌感覚的に合いません。マーケターの方も首をかしげていました。

そこで、もう少し費用がかかりますが、年齢、職業、性別なども含め深堀りしますよとプロファイリングの提案をしました。
お願いしようかなという雰囲気になったときに、ある方が思い出したんですね。そういえば、去年キャンペーンをやりました。そのマーケッター方の発案で関係性の薄い製品間の併せ買いの実験をやりました。
やった本人が覚えていないんですよ。だから、その時期にこんな購買結果が集中したようです。現場の皆さんは気づいていなかったようですが、このキャンペーンは効果があったようです。

実はそんなレベルなんですよ。そのレベルで実務をこなしているので、分析云々の前に効果測定が先ですよね。
過去のキャンペーンを思い出さずプロファイリングしていたら、バラバラなプロファイル結果が出てきて、「ありとあらゆるタイプの人がなぜか買っています、何か同時購買を促すようなことをしませんでしたか?」というオチになったかと思います。

—— それは、統計から推計できないですよね。

鈴木:できないですね。例えば性別も年齢も職業も全く関係ないものが出てくる可能性がありますから。

—— 再現性がないですね。その時だけなぜか併売率が高まっていて。

鈴木:その会社さんにはキャンペーンをやったらちゃんと結果をトレースして、集計値を取りましょう、というあたりまえのことをやりましょうとお伝えしました。

この例からも BI (= レポーティング) が必要なんですよ。

分析ってバズワードで多岐に渡るじゃないですか。今、分析しようとなると統計やデータマイニングが頭に浮かびますが、分析って、レポーティングが必須だと思うんですよ。
レポーティングを軽んじている風潮が最近あると感じています。分析ツールを販売しているときも実は分析ツールといいながら、レポーティングもきちんとやりましょうねってメッセージを出していましたね。少し、矛盾をはらみながら販売していましたね。

—— キャンペーン分析にレポートが必須というその心は?

鈴木:絶対レポーティングですね。

現状把握、御社の立ち位置はこうだ、というのがありますよね。驚くほどわかっていないのですよ。
これもよくあるお話なのですが、売上10%増だって目標を掲げているのに自社の売上構成比を知らなかったり。現状を把握していないのでは、どこをどう伸ばして10%を達成するのは変わらないはずですよ。
山と一緒で頂上は1つでも、登山ルートはたくさんある場合がほどんどです。自分が西側にいるのか東側にいるのかわからないようでは頂上には登れません。ところが道は一本と思い込んでいる。こうなると分析がその1本道を登る方法を見つけてくれるはずだと思い込む。バクチの世界ですよね。

これも色々なケースがあって面白いんですが、リアルケースで、あるECさんのお話です。
この会社は、高額商品を取り扱っているために比較的送料無料になる金額を高めに設定しています。客単価はその送料無料の金額に近くて、仮に10,000円以上買ったら送料無料であればほぼ、客単価は10,000円に近くなっています。

—— お客さんもどうにか10,000円にしようと?

鈴木:はい、10,000円にしようと、本当に欲しいものは8,000円だけど、10,000円にするために2,000円オマケで何かを購入する。

送料無料と同じあたりに客単価がある。だから結構客単価は高いんですよ。いいお客さまですよ。
このECさんに、送料無料のしきい値をコントロールしながら客数を増やして客単価を上げたいと相談されたんです。客数を増やしつつ、客単価が上がれば、総売上が上がるだろうというお話です。
いつもセミナーをやっている私としては、良くこのお話をセミナーの参加者に聞きます、「あなたならどうしますか?」って。客数も客単価も同時に増やしたいと聞かれてどうしますか?って。

—— 客数も客単価も同時に増やしたい?う~ん。

鈴木:ここだけ先に言ってしまいますが、勘の良い人は気付きます。

「両方を同時に上げるのはかなり無謀」って。
これこそ1本道の発想です。普通はどちらかを選択します。「送料を下げて、客数を増やすか」、「送料を上げて、客単価を上げるか」どちらかなんですよ。
ちなみに同時を狙うならどうしますか?

—— う~ん、同時をねらうならどうするか。どうすればいいんだろうね。

鈴木:かなり悩むところなのですよ。マジメに考えてしまうと。

—— わざと欠品状態を起こす。今入荷しましたが、これからは値上げしますって言うのはどうでしょうか。

鈴木:う~ん、それができるのは商材によりますね。

けっこう難しいお話なんですよね。どうしたら良いのでしょうか、という質問には答えられないですね。ビジネスコンサルでも答えは出ない。
結局この会社は、送料5,000円キャンペーンを実施されました。どうなったと思います?

—— 普通に考えれば客単価は下がりますよね。

鈴木:普通そう考えますよね。客単価が下がるって。

5,000円にアジャストしてしまうので、客単価は大幅に下がって、しかも客数は少ししか上がらなったらしいです。

—— 予想通りではないでしょうか。

鈴木:そのECさんはそのように考えなかったみたいです。

ビジネスセンスがなかったですねで片付けてもいいお話なのですが、ここで言えるのは、ビジネスセンスがないのであれば尚更レポーティングをやらなければならない、というお話なのですよ。

例えば5,000円にしちゃったら、どうなりますか、という問に仮説を立てられないのであれば、テストキャンペーンをやればいい。母集団全体にやらずに、絞った集団に対してちょっと2000円にしてみてどうなるかを見てみて、客数/購買回数は少ししか上がらなくて客単価が下がったって見えれば、全体母数に充てていけばそうなることは自明の理じゃないですか。ですので、テストマーケティングとレポーティングさえしていれば防げた失敗だと思います。
ただ実は、このECさんはサンプルを絞ってテストマーケティングをして、というステップは実は踏んでいるんです。

—— えっ、そのステップを踏んでいたのですか?

鈴木:はい、実は 踏んでいたのです。しかし、サンプリングにミスがあったんです。

これも聞けば残念な話しなんですが、仮に会員が10万人いたとするじゃないですか。アクティブなユーザーって10万人じゃないですよね。普通に考えて10%がアクティブなら、1万人がアクティブユーザに相当します。
そのECさんは残り9割の休眠ユーザーからしかサンプルを取らなかったんですよ。送料減額キャンペーンをやったら、当然普段買っていないお客さんが安く買えるのであれば、買ってみようかってなるじゃないですか。だから、客数がグッと増えたように見えてしまったんですね。
この客数増加効果を見たら、多少単価下がってもいけるとなってしまった。全体に展開したらとんでもない結果になってしまった。

—— 冷静に考えると、センスというよりも統計的な発想が間違っていたということですかね。

鈴木:そうですね、統計的な発想というと難しくなってしまいましが、この辺はちゃんと訓練すれば何とかなる話だと思うので、この辺をちゃんとやりましょうという話が良いかなと。

変な話、精緻に分析をすると送料を8,000円か9,000円にしたほうが客数も上がるし、客単価も極端に少なくなることはなかった、そんなことを議論するレベルではなかったのです。
それよりも前に、テストマーケティングの意味をわかりましょう。といったことの方が良いのですよ。

実際、そのお客さまは統計のことは全くわからない、でもいいんですよ、テストマーケティングで7,000円、8,000円、9,000円と変化させ、8,000円がいいようだとわかればいいんですよ。ちゃんとサンプリングして、テストマーケティングの効果の波及度合いをレポーティングしましょう、ということがわかれば。
いきなり偏ったサンプリングからそのまま全体キャンペーンをやってしまうという大きな失敗をしてから、どうしたらいいですかなんてこともなくなるのかなと。

—— だから、レポーティングがベースに必要なんですね。7,000円で試してレポート見る、8,000円で試してレポートを見る…

鈴木:そうなんです。

統計解析は誰もができることではないのですが、レポーティングは誰でも出来る。できることをまずやりなさいと。
レポーティングは誰でも出来るはずなので。

—— なるほど、そのレポートを読み解けと。こうなってきているとか、簡単にグラフにすれば良いと。

鈴木:はい、本当にそうなんですよ。

それこそ客単価なんかもグラフにすれば、上がるか下がるかなんて一目瞭然なわけですよ。
そのレポート持って経営者のところへ行けばいいわけですよ。このキャンペーンをやると、こうなりますよ、良いですかと。
これで問題はないはずなのですが、やっていないのですよ。何となく他社が5,000円にしたからウチも5,000円にしましょう、という風になってしまうわけですね。
経営者もそれでいこうとなってしまっている。現場は意外とこんな風に動くことが多いんですよ。

—— そういう感覚のほうが強いのかもしれませんね。現場でデータ云々というと嫌がる方もいらっしゃいますよね。

※続きは、2013年2月26日 (火) 13:20 ~【TiD 無料セミナー】失敗事例から学ぶ「ビッグデータ」のビジネス戦略活用 で。


*編集後記*

鈴木貴志さんから『失敗事例を話します。成功事例より失敗事例のほうがお客様との距離が縮まる。失敗をなくすようにやりませんかというアプローチです。・・・いいじゃないですか失敗したっていう、これは上手くいかないんだなということがわかったという、成功ですから。』には、目から鱗が落ちました。
これまで、セミナーと言えば成功事例と言うのが当たり前かと思っていました。もちろん、これからのマークロジック社にも期待しておりますが、鈴木さんの「失敗事例」シリーズにも期待しています。

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