一般社団法人 『データで考える力』イニシアティブ

本当にシロ・クロ決着をつけたい課題は何なのか?

基本にたちかえって勝負するための統計思考力、データ分析力

みなさん、こんにちは。トレンド・トラップの竹之内です。

前回のコラムでは、「日本のビジネス界に「単純化したモデリングや指標化」と「データで裏付ける」工夫がもっと普及すべき」そして、「勘の良い人には見えるパターンがある」ということを掲載した。

あなたがセールスパーソンであれ、研究開発、企画、財務、経理などの部門に所属する人であれ、データを使ってお客様や上司に説明する機会はあるでしょう。

データ分析スキルを向上させるために闇雲にWebや書籍から情報を得ようとしても、身につかないケースもあるのではないか。

世間では、本質的な問題解決や説得力を増すデータ分析というよりも、小手先で『わかりやすいエクセルグラフ作成』といった内容や、本当は実務に使えない【古典的な最適化理論】を難しい数式で解くことに力んでいる本はたくさんある。しかし、この手の知識で聞き手の琴線にふれることは無い。

では何が本当にタイセツなのか?
それは、本当にシロ・クロ決着をつけたい課題は何なのか?「パッと見てわかる」が大切!
“データ” をグラフ化して、伝えるべきポイントを鮮明にえぐりだすことだ。

ロジカルでもラテラル(*1)でも、自分でゴチャゴチャ論理を振りまわすより “データ” をして語らせよ!

百聞は一見に如かずだ。

例えば、【ある営業所だけ売上が伸びている】という現象をトップに説明したいのなら、”営業所” という “グループ間” の “比較グラフ” が効果的だ。パッとみて、”その営業所” が違うグループに属していることが分かるだろう。

さらに、その現象が一時的なものか継続して起きているのかを説明するには「折れ線グラフ」にして相対比較、期間比較をしてみれば良い。

原因を【欠品を絶対におこさない在庫管理力】と【抜群の提案行動力】にあると云いたいならば、他の営業所とは一味ちがう営業マンと仕入れ担当者とのコミュニケーションの良さを “過去6ヶ月間の欠品発生回数” として営業所間での「比較グラフ」を提示する。

さらに【その営業所の販売計画と出荷実績の差異が一定の範囲にコントロールされている】ことを裏付ける “販売計画精度グラフ” を提示し、行動が結果に結びついているという裏付けを “月間の提案回数” の比較グラフを使えば、訴求したい法則性を相関関係や因果関係として裏付けることができるだろう。

「ビジネスのプレゼンでは、”結論から入る” ほうが勝率が上がる」

ようは、説得するにはデータ分析のセンスが必要なのだ。
とりわけ、ココぞというときに【ソレだ!】と云わせしめる “データ” を見せて相手の心をわしづかみにする “統計センス” と “データ分析力” が必要なのだ。

統計センスとはなんだろう。

ひとことでいえば、目的に合致したデータ分析をふまえた問題解決力であり、本質を伝える力だ。
しかし、ロジカルに説明するのにいつもセンスに頼ってばかりはいられない。
実際には、論理構成に沿ったデータ解析とデータの特徴にあったグラフ化や図解などの訴求方法をパターンとして身につければ良いのだ。

ロジカル・シンキングで使われる論理構成の典型例は以下のパターンだ。

  1. 結論から申し上げると・・・
  2. なぜならば・・・
  3. 具体的に言うと・・・
  4. よってもって(以上のことより)・・・

ビジネスのプレゼンでは、まちがいなく「結論から入る」ほうが勝率が上がる。
問題は、その “結論” が伝えたいポイントが増えたのか減ったのかに関する【変化】なのか?一部と全体を比較した【比較結果】なのか?利益や商品の【構成】や、その構成がいつも一定の比率をもっている【法則性】、売り場やプロモーション活動との因果関係や相関をもつという【関係性】を伝えたいのか?
これらの5つの切り口によって、要求される “データ分析” も訴求するグラフも異なるということだ。


上の例で云えば、『予算をたてたら、いきなり西東京営業所以外はすべて未達であった』という事実を伝え、同時に「西東京営業所」は過去も安定して達成しているという「規則性や法則性」についてパッと見てわかるようにすればよい。

さて、このロジックを統計センスの良い人はどのようにするか・・・
答えは次回で紹介します。


*用語解説*

※1 ラテラル

(ここでは、ラテラル シンキングを示す)発想に一切の “制約” を設けず、あらゆる可能性から問題を解決しようとする考え方のこと。
ロジカル・シンキング(論理思考)が左脳型の論理的な思考法だとすれば、ラテラル・シンキング(水平思考)は右脳型の新しい価値を生み出す思考法と言われている。

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